茨城交通 水戸200か・・80/型式不明+日産ディーゼルフィリピン(EURO TOUR)
日産ディーゼルは、海外のバス製造拠点として、
フィリピンに現地法人日産ディーゼルフィリピンを設立、
ベルギーのヨンケーレから車体製造の技術供与を受け、
1992年よりヨンケーレの都市間輸送向けハイデッカー、
DEAUVILLE 30をベースとするEURO TRANSを製造、
フィリピンだけでなく中国やサイパンに輸出していました。
EURO TRANSは日産ディーゼルの輸出用バスシャシー、
RB46のフレームを前後のアクスルに使用していますが、
ホイールベース間はフレームレスのスケルトン構造として、
耐久性と軽量性を兼ね備えた独自の構造となっています。
車体製造に当たりヨンケーレから購入した治具を使用、
車体構造から塗料までヨンケーレに準拠していますが、
現地の高温多湿な気候に応じ防錆対策を強化しています。
車体は防錆の亜鉛メッキ鋼板が主体とはなっていますが、
前面腰板・後面腰板・ホイールアーチ・屋根はFRP樹脂製、
また側面のトランクリッドや点検口のパネルはアルミ板を、
スカートにはステンレス板を使用しているのが特徴です。
車体の構造材はドイツ製の角チューブを使用しています。
EURO TOURはこのEURO TRANSをベースとして、
右ハンドル化だけでなく、我が国の各種規制に併せ、
軸重配分の変更、非常口の設置、灯火類配置の変更、
ステップの寸法変更、内装の難燃化確認等を行った他、
日本市場を見据えてフロントグラスの一枚化をはじめ、
デンソー製フルオートエアコンへの対応等を図りました。
エンジンは当時高出力志向だった日本市場に対応し、
EURO TRANSが搭載する直列6気筒のPE6T等に代え
SPACE ARROW等が搭載しているV型8気筒の
RF8(310ps)ならびにRG8(350ps)を用意しており、
RF8を搭載する標準出力の観光仕様JA520RBNと
RG8を搭載する高出力の都市間仕様JA530RBNの
二つのモデルを用意、1996年に販売開始されました。
EURO TOURは東京空港交通が大量購入したものの
サスペンションが車軸懸架ゆえの操縦安定性の悪さや
補修部品供給体制に対する不安などもあったために、
他事業者にはあまり普及することはありませんでした。
挙句2001年にはアジア通貨危機の巻き添えを喰らって
日産ディーゼルフィリピンが解散し生産中止となります。
但し、国内メーカーが対抗策として自社の観光モデルに
廉価仕様を設定するなど、国内市場への影響は大きく、
また、車検証の上では型式が不明とされているために、
各種排出ガス規制を逃れることができることもあって、
特にトランク容量の大きい直結クーラー車を中心に、
主にインバウンド観光客輸送に従事する事業者など、
いわゆる新免貸切事業者から強い支持を得ています。
茨交は、2000年に79・80・81の3両を高速車として投入、
仕様はいずれも高出力のJA530RBNとなっています。
車体で目を惹くのは不等間隔となっている窓柱ですが、
これは美観や窓ガラス・サッシ等の部品の共通化よりも、
車体の剛性を最優先にした結果で、こんなところにも
ヨンケーレというコーチビルダーの哲学が現れています。
クーラーはデンソー製のサブエンジン式となっています。
テールランプは当初、横長の田の字形となっていましたが
メーカーの仕様変更に伴い1999年途中より配置を変更し
レシップ製SFL-9000を3枚並べたものになっています。
あわせてリアのライセンスライトも上部から左右に変更、
エンジンリッドの形状も若干変更されています。
茨交のものは当然、仕様変更後のものとなっていますが、
ここでは参考にテールランプが仕様変更される前の、
東京空港交通中古車のリアを以下に示しておきますが、
テールランプの配置及び部品は東京空港交通時代の
車体更生の際、変更されている点にご留意ください。
シーエイチアイ 袖ヶ浦201い8888/型式不明+日産ディーゼルフィリピン(EURO TOUR)
内張りは我が国では珍しいタフテッドカーペットとされ、
床はPVCの黒色で滑り止め付の床材張りです。
側面窓のガラスには馬車を模した「JONCKHEERE」の
ロゴがしっかりと入れられていることも注目されます。
EURO TOURの内装の特徴として、逆T字窓の場合は、
側面窓下部の窓枠にはヨンケーレの伝統に倣って
天然木の合板が貼られていることが挙げられますが、
こちらはT字窓のため金属地剥き出しの部材だけです。
乗降口側後部には高速車らしくトイレがありますが、
トイレ室内の床材も客室内と共通とされているなど、
後付感の漂う仕上がりとなっているのも気になります。
トイレ自体は五光製作所製の循環式となっています。
肝心の乗り心地ですが、振動や車体の軋みは少なく
車体の剛性の高さを感じるどっしりとした味わいです。
ただ、車軸懸架が祟っているのか高速走行中は、
運転士さんが修正舵を当てているのが目立つ他、
スイング扉ながら若干風切音が鳴るのが気になります。
全国的に見ても気軽に乗れる車種でなくなっている中、
現在も3両全車が東京口で活躍することは嬉しいことで
ぜひ独特な乗り心地と内装を味わって頂ければと思います。
お疲れ様です。
茨城交通のユーロツアーですが、高確率で運用に入る路線や時間をご存知でしたら、教えていただけないでしょうか?
>>ユーロツアーファン様
コメントありがとうございます。
ユーロツアーは引き続き79・80・81の3両が健在ですが、
うち80・81の2両は昨年笠間営業所に転入しており、
現在は「関東やきものライナー」で専ら運用されています。
ですので、東京駅発着の各路線よりでの運用を狙うよりも
こちらを狙ってみたら良いかと思います。
参考となりましたら幸いです。