弘南バス 10407-2


弘南バス 10407-2/いすゞU-LV324L+富士重工業(7E)

東武鉄道中古車で東武時代の社番は2203です。
京急に次いで早期から低床化の実現に取り組んでいた
東武は、いすゞ自動車及び富士重工業の協力を得ながら
1992年、2203・2204の2両のワンステップ車を完成させ
足立営業所へ投入、以来2両は2003年まで活躍しました。
2003年に2203・2204共に弘南バスへと移籍を果たして、
うち、2203は10407-2として弘前営業所へと配置されて
一方、2204は10408-3として五所川原営業所へ配置され
それぞれが新天地青森にて長らく活躍を続けて来ました。

この時期いすゞでは既に東京都交通局向けに開発された
都市型超低床バスをベースとしたワンステップ車である
U-LV870Lを正式にラインナップへと追加していますが、
そちらがエンジンを全長の短いV型8気筒に変更した上で
右側に寄せて搭載するなど特殊な構造をとったのに対し、
こちらは京急が投入した日野のワンステップ車と同様に
ツーステップ車のエンジンやリアアクスル等はそのまま
フロントアクスルのみ変更して前方だけ低床化したため
既存のツーステップ車と極力部品を共通化した低価格な
ワンステップ車の投入を実現したことが大きな特徴です。

なお東武では当時、配置される営業所によって扉配置が
後折戸、中折戸後折戸、中引戸と分けられていましたが
ワンステップ車は元々中引戸が主力であった足立営業所へ
主に配置されたため、さほど違和感なく活躍していました。
(1995年式2439・2440は大宮営業所と葛飾営業所へ配置)。

車体は7Eを架装しますが他車との差別化のためか、前面は
中央の腰板が刳りぬかれ行灯状の樹脂版が張られている他、
両端の腰板には樹脂製の窓が設けられているのが特徴です。
但し、10407-2は移籍時に右端腰版の窓は板金で塞がれて
左端だけが東武時代の原型を留める状態となっています。
これに伴い前面のウィンカーはバンパーに設置されたため、
バンパー両端にウィンカーを収める窪みが設けられました。

扉配置は前述の通り都区内向けの中引戸とされていますが
側面窓には黒サッシでヒドゥンピラーの逆T字窓が奢られ、
当時南関東で見られた都市新パス専用車の如き雰囲気です。
行先表示機のうち側面行先表示機は投入時に塞がれており
前面行先表示機は当初は既設のものを使用していたものの
故障したため下部に新たな前面行先表示機を設置しており
この辺りは他事業者では見られない珍しい改造でしょう。

車内は、前述の通り中扉より後方が段上げされている他、
前方でも座席部分の床が段上げされているのが特徴です。
なお、弘南では前乗り前払いで中扉は通常使用しないため
中扉の内側には新たに仕切り棒が追加されただけではなく、
後方通路へのスロープも追設されていることが目立ちます。
床材、内張り、座席表皮は当時の東武の標準的仕様ですが
座席はハイバックシートが奢られているのも目を惹きます。
これも他事業者の都市新パス専用車辺りの影響でしょうか。

また前述の前面腰板部に設けられた樹脂製の窓の内側は
前扉のドアエンジン部分のパネルの形状を変更した上で
運転席から左前方下部が窓を通し見える様になっており、
この窓が視野拡大の役割を果たしていたことが解ります。

我が国における低床化の黎明期の努力を後世に伝える、
貴重な車として注目されるところとなっています。

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